生地の「ハギレ」はなぜ発生してしまうのか?~ハギレくん誕生物語~

皆さんこんにちは。MANUALgraph代表の鈴木です。
いつもものづくりのこと、ソファのこと、またブランド運営のことなどを中心にブログを書いています。

今回はソファづくりのことで、僕がずっと悩んでいることについて書きたいと思います。
悩んでいること、それはソファをつくる際に必ず発生する生地の「ハギレ」についてです。

MANUALgraphは、ソファをつくる小さな工場が運営するものづくりブランドなのですが、普段ソファをつくるその工程と倉庫を見ていていつも気になるのが「ハギレ」です。
もったいないなと思いながら、このハギレを使ってクッションをつくったり小物をつくったりと様々な取り組みをしてはいるものの、なかなかその悩みを解決出来ずにいます。

今回は、そもそも「ハギレ」とは何か、なぜ発生するのかを皆さんにお伝えしたいと思います。題して「ハギレくん誕生物語」です。
最後まで読むと生地のハギレについてめっちゃ詳しくなれます(笑)。

目次

  1. ソファづくりにおける生地
  2. ハギレくん誕生の瞬間
  3. お客様に寄り添うからこそのハギレくん
  4. ハギレくんのお母さん、宮下さん
  5. ハギレくんにもっと活躍の場を!

1.ソファづくりにおける生地

そもそも、ソファづくりにおいて生地(ファブリックや革)はとても重要な材料です。
ソファの外形のほとんどは生地で包まれていて、その美しさやデザイン、また質感や機能性の大半を占めています
なので、技術的にも生地を裁断して縫製するという工程はとても重要になります。

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ソファの生地パーツ

画像は3人掛けソファを1台つくる際に使用する生地を、パーツごとに裁断した様子です。
これでソファ1台分のおおよそ1/3のパーツです。

当社の場合、一つひとつ職人さんが手作業で裁断をし、このパーツ取りをしています
大量生産するアパレルメーカーさんや大手ソファメーカーさんなどは、「裁断機」なる大きな機械を使って大量の生地を大量に裁断するのですが、当社の場合は受注生産でセミオーダーのソファをつくっているので、その工程は手作業になります。

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専用のハサミで手で裁断しています

この「裁断」の工程で「ハギレくん」は誕生するんです。
決して悪いヤツじゃないので、皆さんこの後ご紹介するハギレくんをどうか愛してあげてください(笑)。

2.ハギレくん誕生の瞬間

この生地を「裁断」する工程の前にまず「型取り」を行います。
ソファごとの「型紙」に合わせて実際の生地に型を書き込みます

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「チャコペン」を使って生地に型を書き込みます

ハギレくんを拡大表示

生地に型を落とし込んだ様子です。ここにハギレくんのサナギが潜んでいます。

※注) ハギレくんは昆虫ではありません

ご覧の様に、随所にハギレくんのサナギは潜んでいます。
特に画像左側の部分に関しては特大のサナギが発生しています。
この状態から生地を裁断した瞬間にハギレくんは誕生します。

前述した通り、当社のソファはセミオーダーの受注生産です。
お客様には何百種類もの生地の中から、お好きな生地を選んでいただいているので、既製品のように次から次へとつくる大量生産の中で「余った生地を使い回す」ということはできないのです。

3.お客様に寄り添うからこそのハギレくん

ここからはちょっと真面目な話です。(ずっと真面目ですが...)
当社MANUALgraphは、ブランドのメインメッセージ「FUN LIFE FUN SOFA〜よりあなたらしく、好きな自分でいられる暮らしを〜」としています。

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それはつまり、受注生産でソファがつくれる自社の強みを活かし、お客様が「自分らしい」と思えるソファを、好きな生地を選んだりサイズをオーダーすることで実現しています。

1人のお客様のソファをつくる為だけに、お客様が選んだ生地を必要な数量で生地メーカーに発注して使用しています。
もちろんソファの形状に合わせて必要最低限の数量を発注するのですが、それでも先程の画像のようにハギレくんは生まれてしまうのです。

メーカーとして、ブランドとして、一人ひとりのお客様に向き合い、厳選をしているとはいえ、なるべく多くのラインナップからお好きな生地を選んでいただきたいと思っています。
でもそれにより大量のハギレが発生してしまっていると言う事実があります。
だから僕はずっと悩んできました。

4.ハギレくんのお母さん、宮下さん

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今回このnoteを書くにあたり、当社のソファの生地の裁断のほとんどを担当してくれている当社の職人、「宮下さん」に話を聞いてみました。

実は僕と同じく裾野市出身の宮下さん。元々東京のアパレル業界にいらっしゃったこともあり、生地の型取りに関しては超エキスパートです。
ちなみにこの後紹介するハギレくんを使ったMANUALgraphのオリジナル商品のほとんどは、宮下さんと、写真の後ろにチラっと写っている縫製担当の石本さんが2人で考えてつくってくれています。

僕「宮下さん、ハギレくんについてちょっと話を聞きたいんだけど、まず普段裁断を行うにあたってハギレくんについてどう思ってます?」

宮下さん「残布と言えど、工夫次第ではかわいい小物に生まれ変わったり使い道はあるので宝物です。」

僕「かわいい我が子って感じ?」

宮下さん「そ、そうですね(笑)。毎日切り刻んでますけど…。でも、なるべく発生しないように工夫していますよ。」

僕「どんな風に?」

宮下さん「まずパーツの型の全体像を考えて、いかに上手く組み合わせて生地取りができるかを設計します。もちろん生地の縦横や、柄物などは柄合わせも必要なので緻密に考えます。パーツの組合せが重要です。」

僕「なるほど。いつも工夫してくれているんですね。」

宮下さん「もちろんです。でもそれでもどうしても最低限のハギレは発生してしまうので、社長、もっとハギレくんを上手く活用する方法を考えてくださいね!」

僕「も、もちろん!最後に宮下さん、ハギレくんのお母さんってことで紹介してもいいかな?」

宮下さん「は、はい…。(苦笑い)」

5.ハギレくんにもっと活躍の場を!

ハギレくんにもお客様にも、そしてもちろん宮下さんにも罪はありません。
メーカとしてブランドとして、このハギレくんをもっと大事にする手段として、これまでもハギレくんを使った商品をつくってきました

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ハギレくんを使ったオリジナルアイテム

このポーチやクッションも宮下さんや石本さんなど当社の職人が一つひとつ手づくりでつくっています。
なので決して安くは販売していません。

当社の販売力がまだまだなので、それなりにつくって販売してもハギレくんは日々大量に誕生し、倉庫で「僕らの出番はまだか!?」と待機しています。
そもそもこのクッションやポーチは今の販売数ではビジネスとしても成り立っていません。
出番を待ちわびているハギレくんたちにブランドとしてもっと活躍の場を与えたい!

実は今、ハギレくんにもっと活躍してもらえる商品を開発中です。
恐らく今年の夏以降にはリリースできると思います。

MANUALgraphとしては、今後もっともっとハギレくんに活躍してもらえる仕組みづくりにも挑戦していきたいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
今後ともMANUALgraphと、そしてハギレくんを応援していただけたら嬉しいです。