ただひたすらに「ソファのバネ」について書いてみた。
皆さんこんにちは。MANUALgraph代表の鈴木大悟です。
今回はソファに使用するバネについて、皆さんにどうしてもお伝えしたいことがありブログを更新しました。
最初にお伝えすると、めちゃくちゃマニアックな話なのでご容赦ください。
まず、当社MANUALgraphは、元々業務用のソファを作っていた会社が立ち上げたソファ専門のブランドです。会社自体は創業57年になります。
業務用のソファとは、例えば昭和の時代は高級クラブやホテルなど、不特定多数の方が使用する場面のソファ。
そのものづくりの条件としては、「どんな人がどんな状況で使われるか不明な状態で、極力丈夫な作りをする」と言うことが必要となります。
その丈夫な作りを実現するのに必要不可欠なのが今回の「バネ」のお話です。
目次
- ソファの構造に必要不可欠な「弾力性」
- 当社のソファに使用する特注のSバネ
- ソファの座面の厚み
ソファの構造に必要不可欠な「弾力性」
椅子やソファの座面に必ず必要な機能、それは「弾力性」と「クッション性」です。
ただの硬い板に座るのでは疲れたり腰が痛くなってしまいます。痛みを軽減し、長時間リラックスして座っていられるのが、本来の機能的な目的です。
その為には、座る面には必ず適度な「弾力性」が必要となります。
余談ですが、昔はその弾力性を実現する為、内部に「藁」を使用していた時代もあります。
今でもたまに古い椅子の修理を承ると、中から藁が出てくることもあります。
椅子の座面の藁
藁の時代は昭和初期から以前の話で、戦後以降は鉄製のバネが採用される様になりました。今では、Sバネと言われる画像の様なバネが主流です。
当社が使用している特注のSバネ
当社のソファに使用する特注のSバネ
このSバネが当社の最大のこだわりであり、特徴です。
先代の頃から、「丈夫で長持ちする」ソファを作る為、バネの間隔のピッチが狭いSバネをバネ屋さんに特注してもらい、長年使用してきました。
通常はバネ同士の間隔が9~10cmに対し、当社が特注しているSバネはその間隔が8cm。
当然バネ同士の感覚が狭いほど体重を支える面の密度が高くなり、より丈夫にしっかり体を支えることができます。
なぜSバネが丈夫かと言うと、その耐久性は計り知れないものがあります。
たまに何十年も前に当社で作ったソファの張り替えを承ることもあるのですが、表面の生地やウレタンは劣化していても、内部の木部とこの特注のSバネは全く劣化していないんです。
長年特注してきたこのSバネが丈夫で耐久性があると言うのは歴史が証明しています。
ところがそんなSバネにも、もちろんデメリットがあります。それは「構造上座面が厚くなる」と言うことです。
ソファをデザインする際、デザイン性を優先するとどうしても座面を薄くしたくなるケースがあります。
しかしバネは当然上下に伸び縮みするので、その分座面には厚みが必要となります。最低でも16cm必要というのが当社の基準です。
座面を薄くする方法もあります。それはバネを使わないという選択です。具体的にいうと「ウェビングテープ」や「ダイメトロンシート」なるものを採用する方法です。
バネの代わりに座面にウェビングテープを使用した例
この工法も今や一般的に使われる仕様ですが、当社では先代から「ウェビングテープの座面など邪道だ、絶対にSバネを使うんだ!」と言う、もはや言い伝えの様に言われてきました。
ウェビングテープも確かに「弾力性」を表現するのには有効的で絶対的に否定するつもりもなく、標準的に使用するメーカーも多いのですが、当社では先代からの言い伝えによりSバネにこだわっています。
ソファの座面の厚み
Sバネの特徴はやはり耐久性です。
ウェビングテープは、布とゴムで出来ています。長年使用していると段々と伸び切ってしまいます。
一方で鉄製のSバネは、前述した様に歴史が証明しています。
確かに「座面を薄くできない」と言うデメリットはじわじわと効いてきます。
MANUALgraphでも外部のデザイナーさんにソファをデザインして頂くこともあるのですが、その際必ずネックになってくるのは座面の厚み。
でもそこは譲れないので、「すいません、これ以上は座面を薄くすることはできないので、座面を厚くデザインしてください」とお願いします。
ただし、Sバネを使用しても極力座面を薄くする事にも挑戦してきました。
MANUALgraphの代表作、「ロモンドタータン」もSバネを使用していますが、極限まで座面を薄くする構造を実現しています。その上で業務用基準の耐久試験にも合格しています。
極限まで座面を薄くした「ロモンドタータン」
耐久試験の様子。ちょっとかわいそうでしたが、見事クリアしました!
そんな当社が長年こだわってきた「通常よりバネの間隔を狭くした特注のSバネ」ですが、実はなぜ今回このブログを書こうと思ったかと言うと、特注をお願しているバネ屋さんから先日連絡があり、「国内のバネの需要が激減してしまっています。御社の特注のバネも今後作れなくなってしまうかもしれない」と告げられました。
当社にとっては死活問題です。
うちがもっと頑張って大量のバネを発注できていればこんな事にもならなかったかもしれないと思い悔しくなりました。このご時世、バネ屋さんの苦しみも理解できます。
と言う事でSバネの素晴らしさ、重要性を皆さんにお伝えし、ソファ用のバネのことを少しでも知ってもらい需要を少しでも上げて、逼迫した業界を盛り上げたいと思い、筆を取りました。
最後にSバネの弾力性を動画でご覧ください。
週の中ば、お疲れの皆さんに
— 鈴木 大悟 | ソファD2CブランドMANUALgraph代表 (@Daigo_P) December 1, 2021
「ソファの座面のバネの弾力性」
をお届けします。
癒されて下さい☺️#今日のMANUALgraph pic.twitter.com/00eqlvrlcv
この豊かでしなやかな上下の動きがなんとも愛くるしく癒されますよね。
皆さんもソファ選びの際、「座面にバネが使用されているかどうか」を意識して選んでみるのもいいかと思います。
もちろん一長一短ありますが、バネの間隔が狭いSバネのソファは丈夫で長持ちすると言うことは僕が保証します。
ちなみにですが当社MANUALgraphのソファは、「富士宝永山ソファ」を除いて、その他全てのソファに「間隔の狭い特注のSバネ」を使用していますのでよろしければご参照ください。
以上マニアックな「ソファのバネの話」でした。最後まで読んでくださりありがとうございます。