ソファの中で育まれる【ヒバとバネ】による素敵な関係。

皆さんこんにちは。MANUALgraph代表の鈴木大悟です。

前回、ソファに使われる「Sバネ」について、とてもマニアックな内容のブログを書いたのですが、今回はそんなSバネがソファの中で素敵な関係を築き上げている【ヒバ材】について、これまたマニアックなお話をさせていただきます。

「Sバネ」のお話はこちら>>

目次

  1. まず、そもそものソファの中身について
  2. 当社が50年近く採用してきた木材【ヒバ材】
  3. ヒバの強度について

まず、そもそものソファの中身について

誰しも一度は自宅のソファの中身が気になったことがあるかと思いますが、ソファを真っ二つにして中身を確認するなんて、なかなかできることではありませんよね(笑)。

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当社のソファの中身

 

ソファの中身には様々な素材が使われ、その素材をどのように組み合わせるかもまた様々です。

そして世に存在するソファの大半は、中身に木材を使って作られています

僕が知る限りで例外を挙げると

  • モールドウレタンのみを使って作られるソファ
  • ビーズなどを使った、所謂“ダメにする系”のソファ
  • 木材以外の鉄などで中身が構成されているソファ

などがありますが、それ以外のほとんどのソファの中身は木材で出来ています。

当社が50年近く採用してきた木材【ヒバ材】

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当社のソファに使用しているのは「カナダ産のヒバ材」「国産のヒノキ合板」です。

今回はこの「ヒバ材」と当社のソファの特徴でもある「Sバネ」の関係性についてお話します。

このタイミングであえて「ヒバ材」について書こうと思ったきっかけは、皆さんも一度は耳にしたことがあるであろう「ウッドショック」です。

今回のウッドショックは、新型コロナウィルスの影響で木材の価格が高騰したことで起こりました。

ウッドショック問題いつまで続く? 今後の高騰見据え、工務店社長「リフォーム視野に事業の多角化目指す」>>

 

当社が長年使ってきた木材の価格も、ウッドショックにより約3倍に跳ね上がりました

そこで、ヒバに変わる他の木材はないか調べると同時に、なぜヒバ材にこだわってきたのかを改めて見つめ直してみました。

当社が使用している木材は正確には「ベイヒバ」です。
別名イエローシダーと言い学名はヒノキ科「Chamaecyparis nootkatensis」です。

ちなみに日本国内の青森県などで採れる「檜葉(ヒバ)」とは学術的に別物なのですが、見た目や香りなどが似ている為ベイヒバと名づけられました。

さらにちなみにですが、ヒバの別名でもある「あすなろ」の語源は、「ヒバが明日はヒノキになりたい」という意味があるとも言われています(ヒバ切ない...)。

ベイヒバの産地は主に北米で、当社ではカナダ産のものを使用しています。

独特の香り青白くも黄色白くも見える色「ヒノキチオール」という成分が多く含まれ耐腐朽性や抗菌性が高いのが特徴です。

ヒバに含まれるヒノキチオールは、ヒノキ以上と言われています。

ヒノキチオールとは? >>

 

独特の香りも、この木に囲まれて育った僕にとっては、なんとも言えない哀愁漂うとてもいい香りです。

ただ、木目や色などの見た目は正直なところ微妙です。
ヒノキチオールの影響なのか塗装のノリが悪く、クリア塗装をするとなんとも言えない青白い輝きを発します。

その為、テーブルの天板や住宅の柱など目に見える場所の素材としてはあまり使用されません
必然的に用途は見えない場所に限られるので、比較的安価でもありました。

そして1番はその強度の強さ
詳しくは次の項目で触れますが、強度がありヒノキチオールも含まれ、安価でしかもソファの中身で使うので見た目は関係ない

どう考えてもヒバ以上にソファの中身に使う木材として適しているものはないのです。

これまでに何度も、
「せっかくメイドインジャパンのソファを作っているのだから、国産材は使えないものか?」
と検討してきましたが、特に強度面においてヒバに代わる木材は見つかりませんでした。

そして何より、当社で50年近く使ってきたその実績と歴史が、ヒバが最適であるということを証明しています。

ヒバの強度について

さて、ここでやっと本題、なぜ当社が長年ヒバにこだわってきたのか、価格が3倍になっても使い続けるのか、についてお話ししたいと思います。

その答えが、今回のブログのタイトルでもある「Sバネ」との関係です。

こちらの画像をご覧ください。

画像2を拡大表示当社のソファの内部の座面の様子です。真ん中の黒いバネが皆様お馴染み「Sバネ」です。

もう少しアップで見てみましょう。

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そう!ここです!このSバネが止まっている部分

ちなみにこの部分は…

画像4を拡大表示専用の道具でこのように引っ張って止めています。

力を入れて引っ張って止められ、かつ人の体重を支えるSバネは、当然伸び縮みを繰り返します。
その時に重要になるのが「Sバネが止まっている部分の木材の強度」なんです。

当社でも1番のベテラン職人、Sさんにも改めて聞いてみました。

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最ベテランSさん。40年近くヒバと向き合ってきました。

 

僕:「ねえ、ヒバの代わりを探してるんだけどさぁ... 」
(僕が子供の頃から会社にいるのでタメ口です。)

Sさん:「またか!ダメだって何回も言ってるだろ。ヒバじゃないとこのSバネの引っ張りには耐え切れないんだって!」と一蹴。
(文章にするとすごい剣幕ですが、とても物静かなSさん。実際はこのような事をボソボソっとおっしゃっていました。)

写真を見るとわかるように、非常に狭い面積の部分にSバネを止めているので、この部分の強度が弱いとSバネの引っ張りにつられ木材が割れてしまいます。

つまり、座る人の体重を支え、その伸縮で快適な座り心地を演出するSバネを、ソファの中でしっかり支えてくれているのがヒバなんです。

この「ヒバとバネ」の素敵な関係こそが、当社のソファの座り心地をつくり上げているんです。

と言うわけで、結局価格が3倍になろうがなんだろうが、やはり今の所ヒバに代わる木材はありません。

ウッドショックはいつまで続くかわかりませんが、涙を飲んで3倍に跳ね上がった(正確には材木屋さんに無理を言って2.5倍くらいまでまけてもらいました)ベイヒバを発注しました。

そのヒバがもうすぐ工場に入荷してきます。

今年も、長年使い続けてきたこのベイヒバを使ったソファを皆さんにお届けしたいと思います。

またマニアックな話になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。